身寄りのない方の支援
ケアマネジャーの専門は“ケアマネジメント“ですが、身寄りのない方の支援に関わらせていただくと、介護保険だけでは解決できない課題が多々出てきます。
入院時の医療同意、身元保証に関すること、その方が亡くなった時等々・・・
介護保険以外の相談を受けますが、専門外の事が多く、知識不足を痛感しているケアマネジャーも多いのではないでしょうか?
すべての事を解決できないにしろ、様々な課題に対して、対応策を知っておくことで、これから受ける相談に対する答えの幅が広がるものです。
今回、メディカルネットワークでは身寄りのない方の支援に対する方法や知識を得ることを目的に研修を依頼し、講義していただきました。
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講義をして頂いた田中信先生の活動紹介
長崎市社会福祉協議会 地域福祉課 相談支援係 係長
長崎市包括支援センター・訪問介護事業所・地域の民生委員・医療ソーシャルワーカーへ向けて、生活困窮事業や事例検討、後見制度含めた身寄りのない方の支援方法など周知の為に講義を行っています。
研修の内容
・前半はグループワーク
・後半に成年後見制度の研修を行いました。
今回は主にグループワークの内容を紹介したいと思います。
グループワーク(以下の4つは、研修前に、当社から田中先生への質問を基にテーマを決定していただきました)
・身元保証人と医療同意について
・身寄りがいない方の入所や死亡に伴うアパートや持ち家について
・自宅で利用者が死亡した際の対応について
・身寄りがいない方が道で倒れていた場合の対応について
興味のある方は読み進めてください。
身元保証人と医療同意について
病院側から依頼を受けた医療同意について。
万が一、ケアマネジャーが医療同意を記入し、その医療行為で利用者が無くなられた場合、ケアマネジャーは責任が取れないと思います。
ある弁護士の方にお話をお聞きすると、そもそもケアマネジメントの契約書には医療同意に関しての文言が無いと言われます。その文言がないにも関わらず、医療同意をしてしまうと、同意を書いた方が救われません。
対策として、同意書を求められても、しっかりと断る必要があります。同意書を断れない理由に「見殺しにすることになるのでは」、という不安が推測されますが、病院側が医療同意書を取れない=苦しんでいる人に対して絶対に何も出来ないという訳ではなく、緊急時の手術等、人命優先で医療処置を行うようにと定められている法律もあり、病院側もその法律で守られているようです。従って、ケアマネジャーが断っても医療処置ができない訳ではないのです。
身元保証人について
病院側が身元保証人を必要な理由として、亡くなった時、医療費の未払い、医療同意などがあります。しかし、このような事は代替えできることもあります。
親族がいるという情報提供をする事で、病院や施設側を支援することができます。
また、医療同意を断る親族もいます。断る親族の心境として、これから全ての事を自分がかぶらないといけない、という、漠然とした不安を抱えている場合があります。医療同意の内容説明と、その後の事は福祉のサービスで支援していくこと等を説明する事で安心して協力していただいたケースもあります。病院側・親族の方へそのような情報を提供し支援をする事も大切な事です。
身寄りがいない方の入所や死亡に伴うアパートや持ち家について
本人に判断能力が残っていれば、問題ありませんが、判断能力に課題がある場合は、成年後見制度を利用する事で、様々な事が解決できます。
身寄りがない方が何もできずに退去すると、業者や大家がその対応をする事になる可能性もあります。持ち家の場合は放置する事になってしまいます。
そのような財産は、亡くなったら、相続人のものとなります。
その他の対応として、大家さんは身寄りがない方に対して、財産を管理する人をつけてほしいと裁判所に要求する事ができます。すると、管理する人が選定され、その方の権限で、家を売ったり、残りの支払いを代理で行ったりすることが可能といわれています。
そういった事を、大家さんに情報提供する事で、これから先、身寄りのない方の受け入れ先の縮小を防ぐことになります。
また、退去した後の家具等、処分していいものを記録しておくのも、リスク管理の一つです。
そのことで、大家さんも安心して処分の対応ができます。※高価なものは別
自宅で利用者が死亡した際の対応について
墓地埋葬に関する法律:亡くなった方が放置されないように、市が責任をもって埋葬します。ケアマネジャーとしてそのような対応を知っておくと良いと思います。
死後事務委任契約というものがあります。亡くなった後に、散骨してほしいなど希望がある方もいらっしゃいます。このような契約は弁護士とする事があるようです。
※数十万の費用がかかるようで、金銭面に余裕がある方が契約する事が多いです。
最近では、身寄りのない方が成年後見制度を利用して、状況次第では裁判所の許可をもらい葬儀まで出来るケースも増えてきています。
身寄りがいない方が道で倒れていた場合の対応について
緊急時は個人情報使用に関する法律による制限は該当しません。医療従事者へ必要な情報を提供して構いません。
事前の準備として、地域で身寄りのない方の相談は、事前に地域包括支援センターへ相談し想定できる課題について、地域ケア会議等について話し合っておくなどの対応があります。
成年後見制度について
現在成年後見制度を利用する方は、判断能力が著しく低下している方がほとんどを占めています。成年後見制度は、申請をしてから、制度が開始するまでに約4か月の期間を要します。国としては、そのような状態になる前から、予防的に利用することを推奨しています。
講義を受けたケアマネジャーの感想
専門用語が少なくてわかりやすかった。
法的な事だけでなく実情に則していてイメージしやすかった。
根拠や代替えを考えることの大切さとリスク管理について学べた
質問に対しての解説がわかりやすく実務につながるものだと感じた
仕方ないとやっていたことが自分を苦しめる可能性かあることに気づけた
身寄りのない方のケースが多く、考えないといけない事、内容が多いと思います。
今回研修を受けて
身寄りのない方の支援は、親族、介護保険に関わる方々、行政、弁護士など、様々な方の関わりや協力がないと成り立ちません。
身寄りのない方本人はもちろんのこと、その他関わる方々に対する支援、私たちケアマネジャー自身を守るために必要な知識を、これからの支援に活かしていきたいと思っております。
お忙しい中ご講義してくださいました田中先生、ありがとうございました。
社会福祉協議会では、生活困窮者に対する支援の講義依頼を受けてくださいます
講義の依頼はこちらから↓
長崎市社会福祉協議会
http://nagasakishi-shakyou.or.jp/
tel:095-828-1281
担当:田中信 様